「このバッグ、本当に80万円の価値あるの?」
シャネルの店頭や広告を見て、そんなふうに思ったことはありませんか?
手に取れば確かに美しく、丁寧に作られているのは伝わってくる。けれど、価格を見た瞬間、心のどこかで「原価っていくらなんだろう…」と冷静になってしまう自分がいる――
私たちは、ものを買うとき“価格の正当性”を無意識に探っています。とくに高級ブランドとなれば、その目はますますシビアになるもの。
でも実は、その疑問の裏側には「原価率」というキーワードが大きく関わっているんです。
- シャネルの原価率は実際どれくらいなのか?
- バッグや香水、コスメなど商品別の違い
- 他のブランドとの比較や“高くても売れる理由”
…などを、数字とストーリーを交えてわかりやすく解説していきます。
「ブランドの価値を見極める目」を持つことで、買い物はもっと自由で、もっと楽しくなる。
そう感じていただける記事になれば幸いです。
そもそも原価率とは?高級ブランドとの関係性を理解しよう
「原価率ってなんとなく聞いたことあるけど、具体的にどういう意味?」
高級ブランドの話をするとき、まず立ち止まって理解しておきたいのがこの“原価率”という考え方です。私たちが払う価格のうち、実際に「モノ自体」にどれだけお金がかかっているのか?
シャネルのようなラグジュアリーブランドの値段が“高く感じる理由”を紐解くうえで、ここは外せないポイントです。
それではまず、原価率の基本から一緒に見ていきましょう。
原価率の定義と計算方法

簡単に言えば、1万円の商品を売って、その原価が3,000円だった場合、原価率は30%です。
式で書くとこうなります:
👉【原価率 = 原価 ÷ 販売価格 × 100】
たとえばコンビニやスーパーの商品は、原価率が高い傾向があります(60~70%)。なぜなら、薄利多売が前提だからです。
一方で、シャネルのようなラグジュアリーブランドは原価率が10~20%前後に抑えられているケースが多いとされ、実際に「高額=原価も高い」とは限りません。
ここでひとつ疑問が湧きます。
「じゃあ残りの80〜90%は、どこに消えているの?」
…この問いに答えるために、次のパートでより具体的に見ていきます。
一般企業や小売業との比較

原価率を語るとき、業界によってその“普通”は全く違います。
たとえば、以下のような傾向があります:
- スーパーマーケット・飲食業界:原価率50〜70%
- アパレルのファストファッション系(例:ユニクロ):原価率30〜40%
- 家電製品など:30〜50%
つまり、通常の企業では「それなりのコストをかけた上で、利益を残す」構造が一般的なんですね。
広告、ブランド維持、直営店のデザインやサービス、体験……「商品そのもの」だけでなく、「その周辺にある価値」にこそ、多くのコストがかかっているのが高級ブランドの特徴です。
価格の中身を知ると、「高い=損」とは一概に言えないことが見えてきます。
高価格=高原価とは限らない理由

「高いものは、いい素材を使ってるんでしょ?」
そんな先入観を、シャネルの価格構造は見事に裏切ってきます。
確かに、高級レザーやこだわりの素材を使用していることは事実です。
しかし、それは価格全体のごく一部。実際には“ブランド価値”や“物語”、“体験”にお金を払っている”というのが、ラグジュアリーの世界なのです。
たとえばシャネルは、広告に世界的女優を起用し、圧倒的なスケールでキャンペーンを打ち出します。店に入れば、丁寧な接客、豪華な内装、非日常の演出がそこにあります。それらすべてが、商品の価格に含まれているのです。
つまり、高価格の中身は単純な「素材費」ではない。“高いのには理由がある。でも、それは想像しているものとは違う”そう思ってもらえたら、ここまでの理解は十分です。
シャネルの原価率は実際どのくらい?ジャンル別に検証
原価率の仕組みがわかったところで、いよいよ気になる「シャネルの商品って実際、どれくらいの原価で作られているの?」という核心に踏み込みます。
バッグ、香水、コスメ、アパレルなど……一口にシャネルと言っても、その商品カテゴリは幅広く、原価率もジャンルによって大きく異なります。
「高いのは見た目だけじゃないの?」と疑問を感じる前に、商品ごとの構造を冷静に見てみましょう。数字の裏側には、ブランド戦略のリアルが詰まっています。
バッグや財布など革製品の原価率

シャネルのアイコンともいえる「マトラッセ」や「ボーイシャネル」などのバッグ。一般的にこうした高級革製品の原価率は、およそ10〜20%と推測されています。
たとえば、80万円のバッグがあるとして、その中身を分解すると……
- 素材費・加工費(牛革・金具・縫製など)
…10万円前後 - 職人の人件費(手縫い・組み立て)
…5〜6万円前後 - 残りは宣伝、店舗維持、人件費、ブランドプレミアム
実際に、製造を請け負う職人や工房のインタビューなどからも、「素材自体は意外と高くない」と語られることが少なくありません。
ただし、製造コストそのものが高いわけではなく、むしろ「生産性を捨てている」と言ったほうが正確です。
“モノ”より“意味”に価値がある、それがシャネルのバッグです。
香水やコスメ製品の原価率

シャネルの「N°5」や「ルージュ ココ」などの香水・コスメラインは、ファッションよりも比較的手頃な価格で手に入ることで知られています。
香水や化粧品業界では、原価率が10%を下回ることもあると言われており、特にシャネルのような一流ブランドではこの傾向が顕著です。
たとえば、1本1万円の香水にかかっている原料コストは、なんと数百円から1,000円程度とも。
- 世界的な広告キャンペーン(映像、ポスターなど)
- 有名人の起用(アンバサダー)
- ボトルやパッケージの高級感の演出
- 高級百貨店でのブランディングと販売サポート
中でも「N°5」は、長年にわたり“神話”のような地位を築いており、商品そのもの以上に歴史と記憶に価値がある商品といえます。
コスメを通じて、シャネルの世界観に触れる――
そこには単なる「見た目の美しさ」以上の、ストーリーに浸る体験が込められているのです。
アパレル・ファッションアイテムの原価率

シャネルのファッションアイテム、特にプレタポルテ(高級既製服)やオートクチュール(注文服)は、さらに特殊な立ち位置を持っています。
推定10〜20%未満ともされ、服そのものの素材や縫製だけでは到底価格を説明できない構造になっています。
では、何にそんなにお金がかかっているのでしょうか?
- カール・ラガーフェルドの時代から続くデザイン哲学と芸術性
- ランウェイの演出、コレクションの構築にかかる莫大なコスト
- パリのアトリエで仕立てられる1点ものの美しさ
つまり、シャネルの服は“着るもの”というより、“生き方そのものを象徴する道具”です。
Tシャツ1枚でも20万円。驚くかもしれませんが、それは単なる布ではなく、“世界観そのもの”を纏うことに意味があるという考えが背景にあります。
服の価値を「原価」だけで語ることができない――これこそ、ラグジュアリーの本質なのかもしれません。
業界全体と比較したシャネルの位置づけ

「シャネルの原価率が10〜20%だとして、それって他のブランドと比べてどうなの?」こんな疑問が湧く方も多いはず。
実は、ルイヴィトンやエルメスなど他のラグジュアリーブランドも、原価率は概ね同水準です。
特にバッグや香水の分野では、原価率10〜20%というラインが“暗黙の業界基準”となっているようです。
それは、ブランドが「製品の価値を素材だけで測っていない」証とも言えます。
加えて、シャネルは他ブランドよりも芸術・文化・歴史への投資比率が高いとされ、それが価格戦略にも反映されています。
それを知っていれば、価格に対しても納得感が変わってきます。
原価率が低くても高い理由は?シャネルの価格構造を分析
「原価率がたった10〜20%なら、なぜここまで高額になるの?」そんな疑問が頭をよぎった方も多いはずです。
シャネルの価格が“高い”理由は、単なる原材料費の積み上げではなく、その周囲にある無形の価値の積み重ねにあります。
ここでは、原価率では測れない「ブランド価値の正体」を、4つの視点から掘り下げていきましょう。
職人の手作業・素材へのこだわり

バッグやツイードジャケットなどは特に顕著で、熟練した職人が一つ一つ時間をかけて仕上げています。例えば、シャネルの「2.55」バッグには、縫製や仕上げまで20時間以上をかけることもあるそうです。
さらに、素材にも一切の妥協がありません。上質なラムスキン、キャビアスキン、独自開発のゴールド金具など…原材料に使われるものは、すべて品質・風合い・耐久性において厳しく選定されたものばかり。
もちろん、これらの素材や職人技のコストが、原価に計上されているのは事実です。しかし、それだけでは価格の高さは説明しきれません。
シャネルは「本物のクラフツマンシップ」をブランドの核として提示しているため、その価値が“原価を超えて”価格に反映されるのです。
つまり、手に取るモノ以上の時間と手間、そして哲学にお金を払っている。これがまずひとつ目の理由です。
広告宣伝費・モデル起用などのブランディングコスト

誰もが思い浮かべるあのモノクロの香水ポスター、映画のようなCM、トップモデルやセレブリティの起用――そのすべてが、ブランドの魅力を維持するための「投資」です。
たとえば、世界中で一斉に展開される広告キャンペーンには、1回で数十億円規模の費用がかかると言われています。
ブランドアンバサダーにはニコール・キッドマンやマリリン・モンローなど、時代を象徴する存在を起用し、「シャネル=アイコン」としての印象を強く植え付けています。
ここにかかる費用は、当然商品の価格に反映されています。でもそれは、“ただの広告”ではありません。
消費者の記憶に、文化や感性として刷り込まれる「演出の魔法」こそが、シャネルのブランドを構築しているのです。
見た目以上に、“見せ方”が値段を決めている。
シャネルの価格は、その「イメージの精度」にも支えられているのです。
直営店の維持費・ラグジュアリー体験の提供

豪華なインテリア、静かな空気、完璧な接客。これらすべてが、「シャネルで買う」という行為をひとつの体験に変える装置になっています。
これを可能にするためには、当然ながら多くのコストが必要です。
- 高級路面店・一等地の家賃
- ショップデザインや改装費
- 販売スタッフの教育・研修
- セキュリティや管理体制
商品そのものではなく、“買うという行為”をラグジュアリー化しているのがシャネルの本質。
だからこそ、オンラインで全商品を売らない姿勢を貫いています。価格は、モノに対してだけではなく、“その空間と時間”にも支払われているのです。
それは単なる買い物ではなく、「記憶に残る経験」なのです。
ブランド価値という“無形資産”

最後に、価格に最も大きな影響を与えているのが、「ブランド」そのものの存在です。
原価率は、あくまで「目に見えるコスト」の割合にすぎません。しかしシャネルは、それに“意味”を付加することで、圧倒的なプレミアムを生んでいます。
たとえば、同じような素材・形のバッグでも「シャネルのロゴ」が入るだけで、価値は何倍にも跳ね上がります。それは模倣品や他社がいくら頑張っても埋められない、“歴史”という価値の積み重ねなのです。
つまり、シャネルは原価率の低さを「ブランド力」で補っているのではなく、「ブランド力そのものが価値を創出している」ということ。
この視点を持つと、価格がただ高いだけでなく、“意味ある価格”に見えてきませんか?
他の高級ブランドと比較してみよう
ここまでシャネルの原価率や価格構造を見てきましたが、「他のハイブランドも同じようなものなの?」という疑問を持たれる方も多いでしょう。
シャネルの価格が際立って高いように感じられるのは、実際にそうなのか、それともブランド全体に共通する特徴なのか?
ここでは、ルイ・ヴィトンやエルメスなど代表的なハイブランドと比較しながら、シャネルの立ち位置や特異性に迫ります。
ルイヴィトンやエルメスとの原価率の違い

まず気になるのは、他ブランドとの「原価率」の差。
結論から言えば、ルイヴィトン、エルメス、シャネルは“おおよそ同水準の原価率”に収まっていると考えられています。おおよそ10〜20%程度です。
ただし、細かく見ていくとそれぞれの戦略には違いがあります。
▷ ルイヴィトン(LVMHグループ)
- グローバル展開と生産体制が最も整備されている
- セミオートメーションによる効率的製造で原価率は低め
- 広告投資は莫大ながら、大量生産によりコスト分散が可能
▷ エルメス
- 職人によるハンドメイドを徹底
- 少量生産&限定流通のため、1点あたりの原価が高め
- 価格は圧倒的に高いが、それに見合った制作背景あり
▷ シャネル
- ハンドメイドと大量供給のバランス型
- 広告と文化投資に重きを置く独自路線
- 「製品そのもの」よりも「ブランド体験」に価格の重心がある
シャネルは、最も「ブランドの世界観」にコストを投じているブランドのひとつだと言えるでしょう。
「価格vs.価値」のバランスをどう見るか

ブランド品を選ぶとき、私たちはつい「この価格、本当に価値あるの?」と考えてしまいますよね。
これは決して間違いではありません。でも、その“価値”は、原価や素材の話だけでは語れないのです。
たとえば、同じような価格帯でも――
- ヴィトンは「丈夫で実用的」
- エルメスは「職人技と芸術品」
- シャネルは「女性の自由と表現」
このように、ブランドによって“提供している価値の種類”が違うのです。
つまり、価格と価値のバランスを考えるときに重要なのは、「自分が何を得たいのか」という視点です。
- ステータスとしてのブランド?
- 投資価値のある資産?
- ファッションの一部としての表現?
シャネルは、単なるラグジュアリーではなく、“自分を自由に表現する手段”としての価値を売っています。だからこそ、「少し背伸びしてでも欲しい」と思わせる力がある。
あなたにとっての“価値”は、何でしょうか?
ブランド選びは、結局そこに帰着するのかもしれません。
消費者は何を知っておくべき?原価率から考える賢い選び方
ここまで読んできて、きっとこう思った方も多いでしょう。「高級ブランドって、結局“名前代”を払ってるだけじゃない?」と。
――その気持ち、よくわかります。でも、それだけでは少しもったいない。
原価率を知ることは、単に「損得を測る道具」ではありません。ブランドとどう付き合い、自分の価値観でどう選ぶかを考えるためのヒントになるんです。
「価格=品質」ではないという前提

もちろん、シャネルの品質は一流です。素材、仕上がり、職人技に文句のつけようはありません。
でもその価格の中には、それ以外の要素――ブランドの歴史、広告、店舗、体験――が大きく含まれています。
たとえば、同じような品質のバッグでも、ブランドが異なれば価格は3倍以上になることもある。
※つまり、価格の差=品質の差ではない。
では、高級ブランドは意味がないのか?
そんなことはありません。それ以上の「満足感」や「誇り」「高揚感」を得られるなら、その価値は価格以上なのです。
だからこそ、自分にとって“その価格は納得できるか?”を考えることが、後悔しない買い物への第一歩なのです。
ブランドに払うお金=体験や満足感

- シャネルのバッグを持って街を歩いたときの自信
- シャネルの香水を纏ったときの背筋が伸びる感覚
- 店舗で接客を受けたときの“非日常感”
それらは数字に換算できるものではありませんが、多くの人がそれを求めてブランド品を手にします。
「このバッグ、原価は10万円なんだよね…」と冷静になるのも一つですが、「このバッグを持つ自分が好き」なら、それは十分に“価値のある買い物”です。
価格が高いか安いかではなく、自分にとってそれが“嬉しいかどうか”。これが、ブランドと上手に付き合う最大のコツかもしれません。
自分に合った価値基準の持ち方とは

最後にもう一歩踏み込んで考えてみましょう。
「あなたにとっての価値って、何ですか?」
原価率や価格を意識しすぎると、「コスパ」や「損得」でしか物を見られなくなってしまうことがあります。
でも、それだけでは選択がつまらなくなってしまう。
大切なのは、
“自分の価値観を基準にする”ことです。
- 一生モノを選びたいなら、職人技にこだわるブランドを
- 毎日をちょっと華やかにしたいなら、香水やコスメで取り入れてみる
- ブランドの思想やストーリーに共感するなら、そこにお金を使う
周りと比べるのではなく、「私はこれに価値を感じている」と自信を持って言える選び方が、心を満たすブランドとの付き合い方です。
ブランド品は、見せびらかすためのものじゃない。“自分をもっと好きになるためのツール”なのです。
まとめ|シャネルの原価率を知ることは「賢い消費者」への第一歩
高級ブランドに対して、私たちはどこかで「高すぎるんじゃないか」「原価はいくらなんだろう」と疑いの目を向けがちです。
でも、原価率という数字の裏には、“価格では測れない価値”がたくさん隠れていることがわかってきました。
シャネルの原価率は一般的に10〜20%前後とされ、他の高級ブランドと比べて特別に高いわけではありません。
むしろその価格は、素材や製造以上に――
- 長い歴史
- 職人の手作業
- ブランディング
- ラグジュアリーな接客や空間演出
といった「目に見えない価値」に支えられています。私たちはその価値を、“モノ”ではなく“体験”として買っている。
だからこそ、「これは高いからやめておこう」ではなく、「これは自分にとって価値があるか?」という視点を持つことが、後悔しない選択につながります。
ブランドを知ることは、
自分自身の価値観と向き合うこと。
シャネルの原価率をきっかけに、「何にお金を使うと幸せになれるのか」を少し立ち止まって考えてみる――それこそが、本当に賢い消費者への第一歩なのかもしれません。



